映画『かぞくへ』

Introduction

2016年東京国際映画祭スプラッシュ部門で上映され、エモーショナルなラストに観客の拍手は鳴りやまなかった。

その後、フランス・ヴズール国際アジア映画祭では、NETPAC賞(最優秀アジア映画賞)含む3冠を達成、ドイツ・ニッポンコネクションほか海外映画祭でも高い評価を得たのち、2018年には全国公開。東京では異例の9週間のロングランを記録。

2019年には高崎映画祭で新進監督グランプリを受賞した本作。

未来を共に生きる女性か、過去を共有してきた親友をとるのか、人生の岐路に立たされた男が東京で見た深い孤独。

自分が持ちえなかった家族のぬくもりを渇望し、愛を求め、後悔を抱えながら、それでも生きていく―

リアリティにこだわった演出で儚くも強い人間たちの息遣いを描き出した。

Story

ボクシングトレーナーをしながら細々と生計を立てている旭は、同棲中の佳織とまもなく結婚する。

式の準備に追われる日々だ。


ある日、ジムの客である喜多から新たなダイニングバー出店事業の話を聞いた旭は、同じ養護施設で育った親友で、地元・五島列島で漁師をしている洋人を紹介する。

上京した洋人と久しぶりに再会した旭は、佳織と近く結婚することを伝え、彼に結婚式でのスピーチを頼んだ。

親のない旭は、幸せと同時に家族を持つことの不安を洋人に打ち明けるが、洋人は「心配いらん、俺ができとうとやけん」と旭の背中を押す。


佳織にもまた、結婚を急ぐ理由があった。

彼女を可愛がってくれた祖母が認知症の症状が進み、寝たきりになっていた。

なんとか意識がはっきりしているうちに祖母に花嫁姿を見せてあげたい・・・しかし彼女の母親は、低所得で生活力のない旭との結婚をいまだ認めておらず、そんな母親との折り合いのつかなさを佳織もまた、旭に打明けられないでいた。


再び結婚式に向け忙しい毎日を送る旭と佳織だったが、数か月後、ウエディングプランナーとの打ち合わせ中の旭の元に、洋人から「納品している魚の金が支払われない」と電話が入る。

真っ青になる旭。五島にいる洋人に代わって必死に喜多を探すが、行方は杳として掴めない。

新規事業のため船を新調した洋人は、負ったローンのほかに頭金を出してくれた嫁の家族にも本当のことを話せず、出稼ぎと喜多の居場所を突き止めるために千葉でトラックドライバーの仕事を始めた。

旭の罪悪感は徐々に大きくなっていく。

旭は結婚式の延期を提案するが佳織は聞き入れない。旭は、佳織に内緒で洋人を援助するため結婚資金に手を付けた。その穴埋めに深夜バイトも始めることになり、二人の間に生じた小さな亀裂は徐々に大きくなっていく。喧嘩も増えていく。本心を語れないままにすれ違っていく。

ある日、喜多の居場所を突き止めた旭と洋人は、彼を呼び出すことに成功するが、何も知らない喜多が提示してきた時間、それは旭が式の準備のため佳織と約束していた時間だった―

『かぞくへ』予告編

かぞくへ無料上映会

(かぞくへは、劇場公開は終了しており、ご希望の方に、DVDを無料でお貸出ししております。 なお、店頭でのDVDの販売、レンタル、および配信サービスは一切しておりません)

Comments

堤幸彦(映画監督)

そこには「人」がいた。真っ直ぐで、思い、悩み、背負い、、

それはリアルに私たちの隣にいる人達で、あるいは私そのものかもしれない。

だからこの映画には、感情を持っていかれる。橋の上で私も泣く。

気がつくとこの映画の“かぞく”になっていた。恐るべし、春本監督。


原田知世(女優/歌手)

心の友と呼べる人と出会えたなら、人生は豊かなものになるだろう。

その人生が終わる時に思い浮かぶ人たちが、私にとっての『家族』という

枠を超えた『かぞく』なのかも知れない。


二ノ宮知子(漫画家)

ああ、なんで男って…。ああ、なんで女ってこう…。そう、親の言葉は呪いになるんだよ…。細部までのリアルさが、心にとても刺さってきました。若く不器用で愛すべき人達が葛藤する姿に、自分の若い頃を重ねたり、違うだろうと地団駄踏んだり…。最後は旭と一緒に泣いてしまいました。また、旭と洋人の「島の人」感。どういう関係だったか、説明がなくてもわかるような。この東京の片隅に確実に存在してるって思うから余計に痛々しく。世界中の不条理に自分も関われるチャンスはあるし、その時は何かできる大人でいたいな、と思えました。


でんでん(俳優)

この映画に出ている梅田君は、今人気のスポーツ、卓球をやる。2017年東京選手権ショービズの部で彼は第3位を獲得。ちなみに私は準優勝。卓球のダブルスなどでは相方との息が合わなければ勝利はできない。梅田君の松浦君とのコンビネーションの良さは素晴らしい。卓球よりうまい。私は、多くの人にこの作品を薦めたい。


矢田部吉彦(東京国際映画祭プログラミングディレクター)

見事な脚本と、素晴らしい役者。主演の青年ふたりの姿を思い浮かべると、いまでも胸が熱くなる。絶対に観客の胸に突き刺さるはずと、確信を持って選んだ作品だ。


ドン・ブラウン(映画翻訳家)

2016年の東京国際映画祭日本映画スプラッシュ部門の僕的ベスト1『かぞくへ』は、日本インディーズ界に新風を吹き込む傑作。極めてシンプルで分かりやすいのにも関わらず、時代を写す奥深さのある脚本。主演の松浦慎一郎さんの優しさ溢れる演技は特筆すべき。『かぞくへ』には、日本のインディペンデント映画に足りないものが、すべて詰まっている。お見逃しなく。


冨手麻妙(女優)

今の若者は、人との繋がりを絶っているような気がしています。人と人がぶつかり合ったりすれ違ったりして、もがいたり悩んだりすることを避けている気がします。私はこの映画を見て、友情や恋愛を超えた先の救いの場所である“かぞく”というものが見えた気がしました。スマホばかり見つめていないで、自分にとっての“かぞく”をもっと大切にしていこうと思える映画でした。


高佐一慈(お笑い芸人 ザ・ギース)

主人公、その恋人、親友。彼らは誰も悪くないし、皆素直に生き、とてつもなく優しい。なのになぜ、悲しみに向かって歩いていかなければならないんだろう。圧倒的リアリティに、気づいたら泣いていました。もう一度見に行きます。


アダム・トレル(映画プロデューサー)

日本映画を海外配給している人として、日本映画で大事なポイントはオリジナリティー、役者の演技と制作技術(カメラ、編集、音など)。自主映画であっても『かぞくへ』はそれらを上手くできているので、本当にお薦め!海外では人気があったので、日本でも人気が出ると嬉しい!


緒方貴臣(映画監督)

映画という物語の中ではなく、この世界のどこかに彼らが生きている。鑑賞からしばらく経った今でも、そう思えてなりません。人と人が理解し合うこと、愛を取り戻すこと、そして赦し合うことの困難さが、人の心を捉えた脚本、胸に迫る芝居で、シンプルに真摯に描かれる。エンドロールで思い浮かべた”その人”は、あなたにとっての”かぞく”かもしれない。


内田英治(映画監督)

友情、という言葉が嫌いです。嘘くさいから。でも「かぞくへ」で描かれた男同士の友情は、まっすぐで不器用で無様で愛おしい。


杉野希妃(映画監督・女優)

行き場のない感情を持て余す旭、寂しげな笑みを浮かべる洋人、二人の表情がずっと目に焼きついている。不器用な男たちを演じる、松浦慎一郎さんと梅田誠弘さんの熱量と男臭さが画面から滲み出て、息がつまるほどでした。優しくて強靭な映画でした。


宮崎大佑(映画監督)

男の友情は幾つになっても最高だとか三十路女には三十路女にしかわからないのっぴきならぬ事情があるのだといったような安易な一般化や自閉的共感に回収されることから必死で逃れようと奔走する俳優たちの崇高なる熱演に胸打たれた。


映画『かぞくへ』【DCP/シネスコ/5.1ch/カラー/2016/日本/117分】

監督・脚本・編集・製作:春本雄二郎

<CAST>

松浦慎一郎 梅田誠弘 遠藤祐美 森本のぶ 

三溝浩二 おのさなえ 朝霧涼 倉八慶 稲葉祐子 下垣まみ 瀧マキ 福場勍子 田山由起 

後藤ひろみ 吉村公佑 冨田政男

<STAFF>

撮影:野口健司 照明:中西克之 録音:小黒健太郎、田中博信、島田宜之、反町憲人、西正義

整音:小黒健太郎 音楽:高木聡 タイトル・CG:高橋良明、高橋奈津江 編集協力:似内千晶 DCPマスタリング:馬場一幸 撮影助手:平林聡一郎、吉田真二 美術:中村朝 小道具:菅原容子 衣裳協力:星野和美、高橋桃子 メイク:合谷純子 助監督:浅見佳史 制作担当:福田智穂